お風呂に入るためにリビングへ降りると、風呂からすでに上がったのか、Tシャツ姿の晴紀ソファーに寝ていた。
そっと覗くと呼吸が深く、熟睡している様子だ。
もう、風邪引くのに。
仕方ないなぁ、と思い、軽く肩を揺らす。
「ねぇ、部屋で寝なよ。風邪引くよ」
「ん~……」
うるさそうに眉を寄せるが起きる気配はない。
“特別”。
ふと結衣との会話を思い出す。
この人の特別な人って誰だろう。
誰か特別な大切な人でもいるのだろうか。
いるよね、それくらい。
芸能人だし、モテるし。黙っていても人は寄ってくるだろう。
なんだろう、何だか胸が締め付けられるように苦しくなった。
結衣が変なこと言うからだ。
今日はもう早く寝ちゃおう。
頭を振って、浴室へ向かった。
そのあとも風呂から上がってもまだソファーには晴紀が寝ていた。
疲れているのだろうな。
仕方ないなぁとひとつため息をついて、部屋からタオルケットを持ってきて上にかけてあげようとした。
が、自分のこの優しさがあんなことになるなんて……。



