そう。嫌じゃないんだ。

先生に抱き締められた時は鳥肌が立って、至近距離も嫌だと思ったのに、晴紀が触れると嫌だと思う前に体が熱くなる。

熱くなるのに、嫌じゃないし怖くないんだ。


その時、プルル……と携帯が鳴る。
表示は結衣。


「もしもし」

『美紗? 元気ー?』


結衣は心配そうな声で聞いてくる。放課後に元気のなかった私を気にしてくれていたようだ。

友達の優しさを有り難く思いながら、私は資料室でのことを話した。


『そうだったの。ごめん、私も行けば良かった。でも、佐々木くんが来てくれて良かった』

「うん。本当。あのね、すごく安心したんだ」

『安心?』

「そう。あいつが来てくれた時にね。ふふ、でもなんかそれって変だよね」


自分でも戸惑う。来てくれたのがあいつで嬉しかった。


『来てくれたのが佐々木くんだったから?』

「え?」

『誰か来てくれて良かった、じゃなく、佐々木くんが来てくれて安心した、んでしょう?』

「……よくわからない」

『うん。でも、答えは近いと思うよ』


電話ごしに、結衣はふふっと笑う。

何の答えが近いというのだろうか?