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「……、……い、おい!」
後ろから大きな声で呼ばれ、ハッとして振り向く。
そこにはいつの間に帰って来たのか、晴紀が後ろに立っていた。
怪訝そうな顔で帽子の隙間から私を見下ろす、
目の前のテレビはつけっぱなしだったか、先程まで観ていた番組はもう終わっていた。
「びっくりした。帰ってたの?」
「なんだよ、どうかしたのか? さっきからずっと呼んでるのに無視して」
「あ、ごめん。気が付かなかった……」
考えごとをしていて晴紀が帰ったことに気が付かなかったのだ。
晴紀は軽くこちらを睨む。
ん? なんか機嫌悪そう?
ソファーに座ったまま晴紀を見上げて首を傾げた。
すると晴紀は眉を寄せる。
「なんかあったか?」
「えっ?」
「珍しく心ここにあらずって感じだった」
晴紀はじっとこちらを見つめる。
これは、心配してくれているのだろうか。
だとしたら、なんだか嬉しい。
しかし、なんとなく話す気にはなれず、口ごもる。
「別に……何も?」
「ふぅ~ん?」
「あ、なんか飲む? いれてあげるよ」
明らかに疑うような視線から逃れるように私はソファーから立ち上がってキッチンへ向かった。



