ガラガラッと資料室のドアを開け、中を覗き込む。
教室の4分の1程度の広さがあるここは、図書館のような大きい棚に本が適当に並べられ、床には段ボールや資料類が乱雑に置かれている、
そして窓が小さいためか薄暗く、紙特有の印刷物の臭いと埃が立ち込めており、思わず後ずさりそうにのった。
これは、綺麗好きな飯島先生が怒りたくなるのもわかるかも。根気が要りそう。
そう腹をくくり、中にいるはずの斎藤先生に声をかけた。
「斎藤先生~? 相川です。いますか?」
「ああ、相川さん」
斎藤先生が資料棚の間から顔をだす。
奥の方は大分片付いたようだった。
それでもまだまだある。今日中には終わらなさそうだ。
とにかく頑張ろう。
ここまで汚いとある意味やる気が起きてくる。
「さぁ、何からしましょう」
「ではそちらの棚からお願いします」
「はぁい」
それにしても凄い量の資料だなぁ。
私立学校なんだからもう少しうまい収納方法でも見つければいいのにと思うが、あったとして理系の先生達を思い浮かべ、結局は末路はこうなのだろうと一人納得する。
斎藤先生はともかく、他の先生はあからさまに雑そうなのだ。
きっとこの部屋も、今月は斎藤先生が掃除当番だと言っていたが、今までの当番だった先生がまともに掃除をしていないのたろうと推測された。
若手の先生というのも、仕事を押し付けられて大変なんだろうな。
ひとり納得し、斎藤先生を憐れんでいると、明るい声で隣から本を手渡された。
「これはそこに。そういえば、相川さん、久々の日本はどうですか?」
「日本ですか? そうですね。やっぱり日本はいいですよ」
「やっぱり違うもんですか」
「もちろん。それに私は4年しか離れてませんからね。やっぱりこっちの方が肌にはあうのかも」
「へぇ、そういうもんなんですか」
先生は意外そうに目を丸くした。



