VS~Honey~



放課後になると、教室の入り口に陸の姿が見えた。よくある光景だから誰も陸が来ても気にする人はいない。


「晴紀、一緒にスタジオ行こう~」


教室の中まで来て、まだ帰り支度中の晴紀をせかしている。
すると、あれ? とこちらを見た。


「美紗ちゃん、もう帰るの?」

「ううん、これから理系資料室の片付け行くの」

「うわ、大変そう。頑張ってね」


陸までその反応。どれだけ汚いんだと今からうんざりする。


「ありがと。じゃね」

手を降って席を離れようとすると、あっと声をかけられた。


「相川さん」


急に晴紀に呼び止められる。

なんだろう?

しかし、晴紀は呼び止めたまま、何も言わない。
何かいいたげに口を開くが閉じてしまった。


「なに? 何か言いたいことあったんじゃないの?」

「あ、いや。なんでもない」

「? そう」


首を傾げるが、晴紀はそう言って先に教室を出ていってしまった。

何だったんだろ。言いかけて途中でやめられるのはなんだか消化が悪いが、まぁ、必要なら家で言ってくるだろう。

私は気にせず資料室に向かった。