先生が言う資料室とは、理系資料室のことだろう。その名の通り理系科目の資料室で、生徒は滅多に入らないが、噂では乱雑だと言われていた。
昨日の日直は逃げたらしい。
「昨日の日直にたのめばいいじゃないですか」
結衣がもっともなことを言う。
すると先生も大きく頷いた。
「頼みましたよ。昨日と同じ笑顔で了承してくれました」
「あ、それはまた絶対逃げますね」
それには一同うんうんと頷いた。
「実は学年主任の飯島先生に早く片せと怒られてしまいまして……。駄目でしょうか?」
困り顔で言う先生が少し気の毒に見えた。
面倒だったけど、放課後は特に予定もない。仕方ないと諦めた。
「いいですよ」
「助かります。では放課後」
先生は嬉しそうに笑顔で去っていった。
さて、と私は結衣を振り返る。
しかし結衣はパッと顔を背けた。
「結衣~」
「いや、私生徒会だから無理。大変だろうけど、頑張れ」
笑顔で即効、返事をされてしまった。
肩までポンポンと慰めるように叩かれる。
一緒に手伝ってもらおうと思ったのに断られてしまった。
無駄だとわかりつつ、チラッと晴紀を見る。
私の視線に気がつくと申し訳なさそうな顔をした。
「ごめんね。手伝ってあげたいけど俺も夕方から仕事あって」
表の顔ですまなそうに謝る。
もとから手伝う気なんてないくせに。
腹の中では笑っているだろうと予想がつくほどだ。
薄情者と頬を膨らませた。
「いいよ。先生と二人でやるから」
「資料室って大変だよ~。ファイト!」
同情の目なのに口元が笑いを堪えきれていない。
もう、他人事だと思って!



