「へぇ~、斎藤先生ってそんな可愛いこというんだ」
結衣が目をパチクリさせている。
そんなに驚くことだろうか。
私は朝の先生の可愛かった会話を結衣に話したら、この反応だったのだ。
「そんなに驚くこと?」
「驚くっていうか」
結衣はちょっと考えるように手を顎に寄せ、目をくりくりさせている。
「なんていうのかなぁ。斎藤先生って人気あるけど、その分、一線は引いている感じがあったというか。特定の生徒にそういう言い方はしないからさ。意外だなって。ねぇ? 佐々木くん?」
結衣は突然、私の隣に座る晴紀に話を振った。
携帯をいじってはいたが、話は聞いていたようで聞き返したりせず返事をする。
「あぁ……、まぁそうだね」
晴紀は結衣に肯定するように小さくうなずく。
なるほどなぁ。そんなに珍しいのか。
でも、そうかぁ。
じゃぁ私は先生の意外な面を見れたのか。
ちょっとラッキー。
思わずニヤケルと鋭い指摘がはいった。
「もしかして今、ラッキーって思った?」
晴紀は頬杖ついたままチラッとこちらを見る。
おや。
私は晴紀を見返してギクッとする。
穏やかな微笑みは表の顔なのに、なぜか剣呑なオーラが?
「……そんなことないよ」
「思ったんだね」
否定したが晴紀は嘘つくなと言うように笑顔が凄みを増す。
なんだ? なんだ?
なんだかその笑顔がちょっと怖かった。
なにかしたかなぁ。



