準備室に着くと斎藤先生は置いてあったプリントの束を持つ。
あれ? そんなに多くない。私が持つ分がないや。
先生を見上げると惚けた表情をする。
「おや、すみません、一人で持てましたね」
「それ私が持ちましょうか?」
「少ないと言っても重いので、僕が持ちますよ」
「え、でも」
それじゃぁ私が来た意味ないんじゃ?
私が不思議に思っていると先生はネタばらしとでも言うような口調で説明した。
「すみません。実は相川さんと話したかったんです。後、僕の話相手。こう見えて僕は淋しがり屋ですから」
先生の説明につい声を出して笑う。
「アハハ、先生可愛い」
「そうですか?僕はただ相川さんと話しがしたかっただけですよ」
そう言われてなるほどと思った。
そうか。きっと転入したてで気にかけてくれていたのだろう。
「気にかけてくれてありがとうございます」
そう笑ってお礼を言うと、先生はなんとも複雑そうな表情をした。
おや、と思ったが、そのタイミングで始業のチャイムが鳴ってしまった。
「おっと、チャイムが鳴ってしまいましたね。ゆっくり話してはいられないようです」
先生はいつもの笑顔で歩きだす。
そして小さな声で残念ですねとつぶやいた。



