結衣たちと別れて先生について数学準備室にいく。
先生はゆっくり歩きながら私を見た。
「相川さんはもうすっかり学校にはなれたようですね」
「はい。クラスの雰囲気もいいし、友達も出来ました」
本当、クラスの皆はいい子ばかりで溶け込みやすかった。
「先生が言ったとおりですね」
「ふふ、それは良かった。中途半端の時期の転入で心配だったんです」
斎藤先生はホッと息をついて安心したように目を細めた。
本当に優しいなと見上げる。
「心配してくれてありがとう、先生」
「いいえ。かわいい相川さんのためなら」
サラッとそんな台詞を言う人はじめてみた。
苦笑すると先生は心外そうに片眉をあげた。
「笑いましたね」
「だって先生、日本でそんなこと言う人がいたなんて」
「仕方ないでしょう、本心なんですから」
拗ねたような口調でポンッと頭をなでる。
その手の熱にドキッとした。
なんだろう。



