「こら、美紗っ」
「由季兄ぃ、ごめん! 今度また説明するから帰って! お父さんに宜しく! またねっ!!」
言うだけ言ってバタンと勢いよく玄関を閉める。
美紗~、と情けない声がしたが、「仕方ないな。この事は黙っとくよ」と帰って行った。
タイミングが悪かったことと、晴紀の事が察しがついたのだろう。
由季は有り難い一言を残して行ってくれた。
ちょっと酷かったかなと思うが、後でごめんねメールしとけば機嫌直るだろう。
お礼も言わなければ。
さて、問題は、このタイミングで帰ってきた晴紀だ。
怒ってた。
口調は冷静だけど、雰囲気が怖かった。
私は恐る恐る、リビングにいる晴紀の元へ行った。晴紀はリビングのソファーに座っていた。
「おかえり。晴紀」
「さっきの誰?」
「幼なじみ。急に来たんだ」
そう説明するが、振り向いてくれない。
声も固かった。
「幼なじみねぇ。だからって家ん中上げるか?」
「それは由季兄ぃが……」
「ありえねぇだろ。俺が居ない時に別の男が部屋に入るなんて」
冷たい声でハァとため息をつく。
そんなに怒らなくても……。



