「あ、あのさぁ由季兄ぃ? 今から私用事があるから……」
「あ? そうなのか。そりゃぁ、悪かったな」
「また、今度ゆっくりとね」
そう言って帰るよう促すと、由季はにっこり笑う。
「美紗、何か隠してる?」
ギクッと肩が揺れる。
鋭い!
しかし、今ここで認めると話は長くなるしややこしい。晴紀との関係もまだ親にバレたくはなかった。
「えっ? 何も?」
「幼なじみなめるなよ。てか、お前はすぐ顔に出るからわかる。何隠してるんだ!」
由季は腰に手を当て、私を覗き込む。
切れ長の二重がスッと細くなり、心を見抜こうとしていた。
言えない。たとえ、由季がこの家に同居人がいることを知っていたとしても、付き合っていることは知らないのだから、下手なことは言えない。
由季に言って、親に付き合っていることがバレて同居が解消になるのはいやだった。
「美紗~?」
うわぁ、笑顔が怖い。
さて、どうやって切り抜こうかと考えていたその時だった。



