陸がいなくなった方角には生徒会室がある。
まさかと思い、扉の前でそっと聞き耳を立てると中から話声がした。

晴紀と顔を見合わせ、そっと少し扉を開けて中を覗くと結衣と陸の姿が見えた。


「で? 陸はここで何しているの?」

「あ~、いや~」


結衣の問いに陸は困ったように頭をかく。


「なんだか焦って入って来たみたいだけど?」

「いや、あれは晴紀が」

「佐々木くん?」


陸はハァとため息を着いた。

そして、意を決したように結衣に向き合う。


「俺が来たとき入れ違いで出ていったあの男は誰?」

「あの人は……」


結衣が口ごもると陸はやや早口に聞いた。


「誰? 何か言われた?」

「……陸には関係ないよ」


その冷たい言い方に陸はムッとした表情になる。


「関係ないとか言うなよ。教えてくれてもいいだろー」


拗ねたように言うと、結衣がため息をつきながら言った。


「別に、ちょっと告白されただけよ」


陸の肩がピクッとなる。
ふざけた口調からがらりとかわり、声を低くして「なんて答えたの?」と聞き返した。

それに結衣はうつむく。