人って、なんて欲深いのかな。最初はただ声を聞けるだけでよかった。時々会って、顔を見れるだけでよかった。
それなのに。
アツシが気持ちを伝えてくれたあの日から、あたしはアツシに対して『もっと』声が聞きたい、『もっと』一緒にいたい、『もっと』好きになって欲しい、と思うようになった。

「もしもし、アツシ?」
「りんが電話してくるなんて珍しいな」
あたしはアツシから2日電話がなかったのが耐えられなくて電話をかけた。いつもは仕事の邪魔になるといけないと思って、電話はなるべくかけないようにしていた。
「どうした?」
アツシが優しく問いかける。
「あ…あのね、」
「うん」
あたしは、伝えたいただ一つの言葉を伝えようと思っていた。けれど、恥ずかしい気持ちに邪魔されてなかなか伝えられなかった。
「あたし…」
「うん」
あたしは深呼吸して、一息で言った。
「好きです」
人に言うのは初めての言葉。あたしは顔が真っ赤になるのがわかった。電話の向こうのアツシにも聞こえてしまうんじゃないかと思うくらい、心臓が大きな音をたてていた。

アツシがフッと笑ったのがわかった。
「ありがとう」
アツシの優しさ声が聞こえた。
「嬉しいよ」
アツシの言葉にあたしの顔がほころんだ。