ラバーズキス

ぼんやりとそんなことを考えていると助手席の窓が開いて「乗れよ」とアツシの声がした。
車に乗ると、あたし達が好きなアーティストの歌が流れていた。
「この曲、聞いたことない」
あたしがアツシに言った。
「あした出るアルバムが、今日手に入ったんだ」
「これなんだ!いいじゃん!」
「そう言うと思って、りんに聞かせてやりたくて」
それからあたし達は1時間ほど、ぽつぽつと喋りながらCDを聴いていた。
「これ、切ないね」
あたしが言うと、アツシはボリュームを上げた。報われない恋愛を綴った歌に、あたしは自分とアツシの“今”を重ねたのかもしれない。
ふいにアツシがあたしを抱き寄せた。
あたしはアツシの温もりの中で、切ない歌詞をじっと聴いた。