開始と同時に大翔は左へ跳ぶ。

直後、地響き。

着地し、先程まで大翔は自分がいた場所を見ると、割れた地面の中心に男が1人立っていた。

「……はぁ」

大翔はため息をつく。

クレーターの中心で男が高笑いをしていた。

「は、は、は、は! 見たか! これが僕の魔法だ!」

(一瞬しか見えなかったが、地面を砕いたのはパンチだった。脚部強化ないし重力軽減に腕部強化を併用しているな)

冷静に分析する大翔に、相手の男の自信満々の声は止まらない。

「僕のはそんじょそこらの魔法錬度じゃない! ははっ! 驚いて声も出ないのは仕様がないね!」

「はぁ……」

再び深くため息をつく大翔。

半眼で男を見据えた。

「確かに驚いた」

「そうだろう!」

「よくそこまで体いじるなぁ。原型無ぇじゃねえか」
「な!」

驚く男を見る大翔の視線はどこまでも冷えきっていた。

「ウェストが30cmは縮んでやがる。シークレットブーツもビックリだぜ、その身長差。だいたい、整形してもてめえの面はそんな俳優みたくなるかよ」

「ななななななっ!」

「なに? そんなに見栄はってなんなの? 原型無いじゃん」

男の顔が紅潮していき、
「なんだとぉおおおおおおおおおおおおっ!」

爆発した。

人間の限界を越えた速度で男が大翔に迫る。

大翔は紙一重で男の拳をかわした。

勢い余った拳が地面に突き刺さると、そこには第2のクレーターが。

「ちっ!」

大翔は舌打ちをする。

(踏み込みで地が砕けたということは脚部強化を使用しているのは間違いない。さらに地面を殴って拳を痛めていない。なんらかの硬化魔法も使ってやがるな)

大翔は冷静に分析した。