《プレイヤー、認証》

追跡者の脳内にアナウンスが流れる。

グラウンドゼロはゲームの情報が個々人の脳に映像・音声データとして送られる。

だからディスプレイやスピーカーは必要ないし、相手に不必要に自分のデータが伝わることもない。

《プレイヤー、高瀬大翔(たかせ ひろと)、確認。状態魔法発動》

大翔の耳に流れるアナウンス。目にはステータス画面が映っている。

ますば戦闘前に、初期に装備しておく魔法を選ばなくとはならない。

大翔のレベルは82。装備可能な魔法の数は5つだ。

その内の1つは状態魔法(アビリティマジック)にしなければならないことが公式で決められていた。

これは、自身の身体的な特徴を変化させる魔法。

つまり、変装魔法と言えるものだ。

これは最初に自分をゲームのキャラに変える。

現実の体格や身体能力によるハンデをなくすためだ。

戦闘中の変更は効かないが、戦闘前もしくは後なら、身長だろうがスリーサイズだろうが性別だろうが自由自在になる。

だが大翔は状態魔法で変化はさせない。

そんなことは自分に自身のない人間のすること。その思いが強いからだ。

大翔は残り4つの魔法を選ぶ。

《知覚強化・聴覚強化・拳銃装備・拳銃装備》

アナウンスが魔法を読み上げる。

《選択完了。戦闘準備。開始10秒前。9、8、7……》

息を吸う。

このカウントがゼロになったとき、大翔しかいないグラウンドゼロに敵の姿が現れる。

《……3、2、1》

大翔は息を吐く。

《0》

戦いが始まった。