一瞬で周囲は秋葉原の裏道ではなくなっていた。

赤い空と白い大地がどこでも広がる異空間。

それがバトルのフィールドだ。

魔法と科学のハイブリットシステム『エリアゼロ』。

この中ではあらゆる事象が通常空間と隔絶されている。

それを可能としているのは『魔法』と呼ばれるものだった。

『魔法』。有史以来、人間とは共にあった夢である。

神話、伝説、錬金術、陰陽道、魔術結社。

様々な形のものが存在したが、全ては空想の産物とされてきた。

それが、現実のものとなったのは第二次世界大戦中。

日本の軍部は、間近に迫った本土決戦を前に存在していた陰陽寮を復活させ、神風により、米国の驚異を取り除こうとした。

だがその計画は失敗に終わる。

広島、長崎への核攻撃が行われ、敗戦を迎えたからだ。

GHQに解体された軍部は、魔導の研究を破棄せざるを得なかった。

研究資料は回収されたが、あまりに荒唐無稽な内容ゆえに、陽の目を見ることなく破棄される。

再び魔法研究が行われたのはそれから23年が経った後、1978年のことだった。

田中奏太(なかた かなた)。彼が父親の手記を見つけたことから話は始まる。

なにを隠そう田中の父親は戦時中、魔法を研究した技術者の1人だったのだ。
その研究記録を田中は発見。魔法の可能性を知ってしまった。

田中は父の研究を引き継いだ。

周囲の目は厳しく、魔法などというお伽噺を本気で研究している田中は、完全に変人扱いを受けることになる。

長い長い間、田中は嘲る世間と、一向に成果のでない研究を相手取り、戦い続けた。

そんな中、田中に転機が訪れる。