あれからずっと開けられなかったチェストに、ずっと封印していた過去の端切れだ。




「バイバイ…、ありがとうユウト――」


ポツリと呟いていたのは、2年前のクリスマスに伝えられなかったフレーズ。



ゴミ箱に捨てたのは、2年前の日付が書かれた元彼宛てのクリスマスカード。



そしてラッピングされたまま封を開けていない、限定のフレグランスとマフラー。



どれもが2年前のアノ日に、置き去りにして逃げて来たモノとの決別のようで。



本当の意味で、ようやくユウトと別れられたね――…





「ただいまー、アスミー?」


呆気なさにボーっとしていれば、バタンとドアの閉まる音とともに届いた声。



その声色を求めるように私は立ち上がって、急いで部屋を退出する。




「お帰りなさい…、遥登――」


「え…、亜朱実…?」


驚く彼にギュッと抱きついて、ようやく呼ぶ事が出来た彼の名前。


ソレとね…、伝えたいコトはありすぎて困るけど。




「ずっと、愛してるから…覚悟してね?」


「フッ…、上等――!」


憎まれ口は私らしく、今日もまたベッドで叩くと思うけど。


お願いだから、賭けの通りに離さないでよ…?



   【パフュームに繋がれて・終】