それにしても…、課長の前の勤務先がTS商事と聞いたアノ日は。



本当に何の因果なんだろうって、上手く取り繕いも出来なかったけど。




この数日で思ったコト、それは。


過去に囚われて、過去に縛りつけていたのは、すべて自分…――




そう…、ユウトという人でも、ユウトの香りでも、ユウトとの思い出でもない。



いつまでも彼との別れを受け入れずに、現実から逃げていただけ。



脚色した物語の中に足を踏み入れて、いつしか抜け出せなくなって。



独りで虚勢を張って、意固地になっていただけなのに・・・





マンションに到着してオートロックを解除すると、今度は扉の鍵を解錠してドアを開いた。



そうして向かったのは、すっかり自室と呼べるほどに整理された私の居場所で。



アパートから持参していたチェストに手を掛けると、あるモノたちを取り出した…。