面会時間はとうに終わってるのに、俺は松浦の顔を見に来ていた

静かに寝ている姿は、まるで死んでいるみたいだ

でも心臓は動いてる

生きている

ちゃんと松浦は生きてるんだ

「起きろよ、松浦」

俺は小さな声で、松浦に呟く

松浦の頬に手をあてる

温かい

運ばれて来た時は、冷たくて…もう駄目なのかもしれないと焦った

静かに病室のドアが開くと、白衣の裾がひらりと舞うのが見えた

「やっぱり…君なら絶対に時間を無視して来ると思った」

外科の医師が、落ち付いた声で声をかけてくる

俺が振り返ると、白衣を着た医者がポケットに両手を突っ込んで、松浦の顔を見つめる

俺は医師のネームを見てから、男の目に視点を合わせた

「越智先生…こいつは目覚めるんですか」

「ええ。必ずね」

「いつですか?」

「もうすぐ」

「気休めですか? 本気ですか?」

「両方」

越智先生がふっと口元を緩めた

「待ってる人間が、信じてあげるのが一番大事なことだと思いませんか?」

「確かに」

俺はにやっと口の端を持ちあげると、廊下が急に騒がしくなった