「座椅子の父」

 座椅子を見ると、いつも父を思い出す。デパートで、知人の家で、座椅子を見ると、脳裏には父の顔が浮かび、少し寂しくなる。

 実家で父が座椅子に座ったまま大口開けて眠っていると、母は心の底から嫌悪しているかのような口ぶりで父を罵った。私も同じように心の中で罵っていた。遅く帰ってきて風呂に入り、ようやく落ちついてご飯を食べようとすると父が居間で座ったまま寝ている。コタツからはみ出した父の足が私の座布団の上に乗っていることもあり、そういうときは仕方がないので台所で立ったまま夕食を食べた。