マジック・エンジェルほたる


 ー教室の中。鬼のような顔をした塾の講師は、
「あの、すいません。遅れました…あの……」
 と頭をさげて謝罪の態度をとった黒野有紀をキッと睨んだかとおもうと、次の瞬間、無慈悲に、有紀の可愛らしい頬に平手打ちをくらわした。彼女ははげしくよろけた。
 そして、その講師は、冷たい視線のまま手で頬をおさえて驚愕している黒野有紀に、
「さっさと席につけ!」
 と命令した。
 有紀は恐ろしくなって全身を小刻みに震わせた。涙が目を刺激したがなんとか堪えてトボトボと席のほうにあるいていった。そして当然のことのように他の生徒達は何ごともなかったように机に向かっているだけだった。
「な、な、な、何よっ。あの野郎!私たちの大事な有紀ちゃんになんてことすんのよっ!」 ふたりは怒りと驚きで眉をツリあげて、
「そうよ、そうよ、そうよ!女の子にとってお顔は大事なもんじゃんよぉ。あんなに強く      あおあざ                    
ビンタして、青痣でもできたらどうしてくれるっていうの?!」
 蛍と由香は激しく誰にもきこえないように怒鳴った。
  時間はだいぶ過ぎ、もう夜になっていた。蛍と由香は”ヒマ人”らしく、塾の建物の外の物陰に隠れるようにして建物から出てくる生徒達をぼうっと眺めていた。何をしているのか?まさか、お勉強に目覚めて入塾するのか?はたまた「あの野郎」こと塾の講師を襲撃するのか……?
「あ!出てきたよ。有紀ちゃんが…」
 由香は声を上げた。そう、ふたりは単に、有紀がでてくるのを待っていたのだ。