マジック・エンジェルほたる

「く、くそっ!な、なによっ、もおっ」
 蛍は馬鹿にして「けけけ…。下手っくそ!やっぱ、由香ちゃんってば、バーチャのやり方ってもんを知らないってことねっ!!」
 とカラカラ笑った。ーので、由香は癪に障って「な、何っ!?この馬鹿蛍っ!ナマイキいってんじゃないわよ。じゃあ…あんた、やってみなさいよぉ!」と怒鳴った。
 蛍は「うん。いいっしょ」と胸を張って宣言してバーチャを開始した。が、青沢蛍は赤井由香の倍くらい下手くそだった。なんとたった七百点でゲーム・オーバーだったのである。
由香は「なぁーに、よ。あんたさぁーっ、…たった七百点じゃないの、情ない。そういうのを飛んで火にいる夏の虫っていうのよ」と呆れた。
「なによ、それ?たしかに蛍って夏の虫の名前だけどさぁ。ジャンプして火で炒めてどうしようっていうのさぁ?」
「馬鹿じゃないの!?」
ふたりのヨタ話しを耳にしながら、有紀は、「飛んで火にいる夏の虫じゃなくて、羊頭                                   
狗肉(見掛けだおし)ね」と心の中で思わず呟いていた。そして、「え?」と言った。
「ほらほら、次は有紀ちゃんの番よっ」
 などと二人組に強引にゲーム機の座席に座らされた黒野有紀はオドオドとふたりの顔をみつめた。そして、「私はいいわ」と声を出すわけでなく、首を可愛らしく左右に三回振った。ー私には、多分できないわ。
「さぁ、さぁ、さぁ、さぁ、さぁっ!」
 有紀は、そんな二人の瞳を見つめてニコッと魅力的な笑みを無理に浮かべた。そして、ポケットから小さな小さなお財布を取り出して、可愛らしい指先で中から百円玉をつまみ出した。(由香や蛍はけして奢ったりはしない。いや、お金を出したりはしない。なぜなら、ケチだからだ)ー有紀は、きらきらとした百円玉を投入した。…ガシャン!