今度は、「ギルガメッシュ」という場所だ。ギルガメッシュ…というくらいだから『ディスコ』とか『ライブハウス』というような雰囲気がある。でも、ぜんぜん違う。はっきりいって単なる安っぽい『ゲーム・センター』…そのゲーセンの名前でしかない。
午後四時二十六分くらいの時刻。だらだらとした春の一日と空間。そんなどうでもいいような場所に「可愛らしくておとなしい文学美少女」こと黒野有紀は、なかば強引に二人組によって連れてこられてしまっていた。そう、あの蛍と由香に。
「あ、あのっ。こういう場所には出入りしてはダメだって、生徒手帳の5ページの校則第十二項にちゃんと記されている…のよ」
有紀は二人組に腕をひっぱられながら、微かな声を発した。以前と変わらない繊細で弱々しい蚊の鳴くような声…。しかし、努力して声をふりしぼってもう一度いったので青沢蛍も赤井由香も発言したことには気付いた。
「え?何?……あの、有紀ちゃん。さっき、声を出す練習をやったばかりでしょう?」
「そうだよっ。もっと”お腹”に力を込めて声をだしてっていったっしょ?!」
蛍も由香も彼女の腕を放して、そう少し説教くさく語った。でも、そうしたネガティヴな感じもあまり続くことはなかった。
すべに蛍と由香はニコニコとちょっと変な笑みを顔中に浮かべて『お気に入り』のゲーム機の前まで駆け寄って、
「有紀ちゃん、有紀ちゃん。さぁ、おいで!!」
「そうそう。これってば……すごく面白いんだよ!!」
有紀は「え?で、でも…」としばらく不安気に立ち尽くしてから、もおっ、という感じで可憐にゆっくりゆっくりと二人の元へ歩いていった。そして、きらきらと輝く大きな瞳をゲーム機のディスプレイ(画面)に向けた。…なにかしら?これって、私の知っているチェスやオセロとどう違うのかしら…?
「ヒヒヒ…」蛍はニヤニヤ笑って続けた。「これってば、”バーチャル・バトルⅥ”っていう…いま若者の間で流行っているファイテング・ゲームな訳よ!」


