マジック・エンジェルほたる

「もっとおおきな声で!」
「そうそう。もっとお腹に力をこめるっしょ!」
 有紀はちょっと顔を赤くして恥ずかしがってから、決心したような顔をして、目をつぶって必死に声をしぼりだして「あーっ!」と叫んだ。その声はやはり繊細で可憐で弱々しかったが、それでも今までの声よりはずっとずっとマシだった。なんせ、二人にも聞き取れたからである。
 由香はニッコリと笑って握手を求めた。蛍もニコニコと微笑して有紀をみつめた。
「よっしゃ。その調子よ、有紀ちゃん」
 ふたりはとても魅力的な顔をした。握手をオドオドと交わした有紀も微かに口元に笑みを浮かべていた。…
「よしっ、つぎはギルガメッシュに直行よっ!」
 ふたり組は元気いっぱいに席からバッと立ち上がってほんわりほんわり明るい声で叫んだ。
「…え?ギルガメッシュ……って?!」
 蛍と由香は有紀の質問には答えずに、またしても彼女を強引に連行して、金も払わずに喫茶店から飛び出していった。それに対して鈴木先輩は、
「おいおい、お金……」
 と呟いて立ち尽くすしかなかった。