マジック・エンジェルほたる

「え?なんでよぉ」
「いま一番流行っているアニメ『セーラー・ムフーン』の主人公うさうさちゃんのセリフ『地球にかわってオシリぺんぺんよ!』っていうのをやらなくちゃあ。」
「…なによそれっ?!もぉ…アニメのことばっかりいってるとぉ…あんたの「大っ嫌い」なタコヤキとピーマンを頭からザザッて振り掛けちゃうわよ」
「うわっ…」蛍は顔をゆがめて「や、やだよぉ!」と、両手で頭をかかえて叫んだ。
「…くすっ。」有紀はそんなコミカルな二人を眺めていて、微かに口元に笑みを浮かべた。このひとたちってオカシイわね。
「やぁ、蛍ちゃん、由香ちゃん」
 バイト中の鈴木先輩がウェイター姿のまま三人に近付いてきて、明るく声をかけた。
「あ、鈴木先輩。」蛍は鈴木先輩と目があって頬をポッと赤くした。しかし、憧れの先輩は蛍のことなど相手にしなかった。いや、別に無視した訳ではなく、蛍の気持ちを気付かなかっただけだ。それは、透明なきらきらした気持ちだ。恋だ。
 鈴木先輩は「…君は…そうか!君かい?学年まん年トップの秀才美少女…黒野有紀ちゃんっていう女の子は?」
 と優しいお父さんのように、もしくは優しい恋人のように魅力的な微笑みをたたえて尋ねた。ので、蛍は少しだけ癪に障って眉をピクピク動かした。…私だけの先輩なのに!…私だけのっ、私だけの鈴木先輩なのに!!
「ちょっと、あんた。そういうあからさまな嫉妬言葉は…心の中だけで叫んでよね」
 蛍が口にした言葉を耳できいて、呆れまくって由香が隣の席からなぐるように注意した。「あ?え?私、いま、何かいった?!」全員の冷たい視線が自分に集まっていることに蛍は恥ずかしさを感じ、目を点にして表情を凍らせた。