昼間の学校の図書館はほとんど誰の姿もなかった。皆、知的探求心が無いのだ。しかし、そうした連中とは「可愛らしくておとなしい文学美少女」の黒野有紀は違っていた。 有紀ちゃんは、おおきなテーブルの隅っこの方に陣取ってぶ厚いフランス語の哲学書を熱心に読み耽っていた。…そう、有紀はフランス語と英語とドイツ語ができる。しかし、外国には一度もいったことはない。……
有紀は大きな瞳をきらきらさせて哲学書を読み耽っていた。この知的探求心は凄まじい。本とのダイアローグ(対話)。活字という死んだ世界の言葉を生きた言葉としてエッセンスをとらえ、人生哲学を学ぶ訳だ。教養を身につけるとはまさにこのことであってねけしてアニメ番組やマンガ本では学べないし理解できない世界だ。
そして、例の二人組”お馬鹿さんコンビ”も、有紀ちゃんのそんな「知的レベルの高さ」を理解などこれっぽっちも出来なかった。有紀の姿を、遠くの物陰からじっと覗きみていた蛍と由香は、
「すごいぶ厚いもの熱心に読んでるわねぇ」
「……きっと電話帳みてんだよ」
などと囁いているレベルだ。さすが、”出来そこない”の二人組である。
「……あのねぇ。電話帳を読み耽っている訳ないでしょ!」ふたりの横にふわりと浮いていたセーラは呆れた声をだした。そして、
「しかし、さすがよねぇ。あなた達とはちがって、あの子には知性が感じられるものね。あ・な・た・達・とは違って…」
「ちょっと、しつっこいのよ!」由香が小声で妖精に注意した。蛍も「そうよ、そうよ、私だってあれ位ぶ厚いマンガ本読むことあんのよっ!!」と小声でいった。
「マンガ本を……あの子が読んでるってでもいう訳?!」セーラは顔をしかめた。


