マジック・エンジェルほたる

彼女の大好物の『カレー・コロッケ・パン』君が家畜のように引きずられていくのを目撃したからだ。カレー・コロッケ・パン君は何度かパクつかれたのか、顔中が穴だらけだった。これじゃあ、食べれないよ! 愕然と立ち尽くしていた蛍は、キッとした表情になり、
「ま、まって!待ってよ!カレー・コロッケ・パン君は私のものなのよ!私が…この蛍ちゃんがパクつくものなのよ!!」
 と叫びながら必死に駆け出した。しかし、走っても走っても、まるっきり追い付けなかったし、それどころか距離はどんどん広がっていった。カレー・コロッケ・パン君の悲しげな横顔が遠ざかっていく。と、次の瞬間、ほわほわのホイップ・アイスの波が襲いかかってきて彼女はギュッと目をつぶった。
 しばらくして蛍はふたたびビックリしてしまった。るり色の光の中で、草原に呆然と立ち尽くしている自分を発見したからだ。
 ーどうしたんだろう?彼は?!カレー・コロッケ・パン君は?!ー
 天からの陽差しがきらきらきらきらと辺りを照らしていた。誰もいない。
「……あっ、これは!!」
 蛍の目の前に、サビついて誇りに覆われて蔦まではいまわっているようなスクラップ寸前の『カンターム』があった。カンターム…それは蛍が小学生の頃に熱心にみていたアニメ番組『銀河戦士・カンターム』の中でヒーローのミーシャ・ゴルビーという美少年が乗って宇宙を飛び回るコンバット・マシーンだ!いわば、ロボットの主役だ。ちなみにM・ゴルビーのライバルは、ボリスン・エリツィーンという銀髪のシルバー大佐と呼ばれた敵のグレムリン軍のエースだ。
「カンタームだわ!本物のカンタームだわ!あの憧れのヒーロー、ミーシャ・ゴルビーの乗っていたマシーンよ!!なつかしいなぁ……よく小学生のときに熱中して観ていたもんなぁっ『銀河戦士・カンターム』!」
 なんともアーティステックな光景だった。蛍は茫然と立尽くしてまざまざとカンタームをみつめほわっとした表情になった。ー「よし!」
 サビついた機銃座にすわると、なんだかどうしようもない衝動にかられるのを感じた。 妖精セーラが低く、大地をかすめるように飛んでいる。蛍はそれをおおらかな気持ちで眺めてから、いささか興奮した気分で銃口を妖精セーラにあわせて、狙いを定めた。