マジック・エンジェルほたる


 そんな時、いやその命令を遮るように、
「やめなさい!」
 という、少女の可憐だが勇ましい声が響き渡った。その声の主は「伝説の戦士」青沢蛍だ。フィーロスらは、その声のした方角へ視線を向けた。そして、戦士と対峙して攻撃を開始した。
 ドオォ・ンという爆風に吹き飛ばされ「うあっ!」っと蛍は床に激しく転がった。うつぶせに倒れた蛍は、
「あ、痛たたた…っ」と、身を起こして腰に手をあてて、そう情ない声を発した。まるで負け犬だ…。
 突然、由香が弾かれたように蛍の元に駆け寄って「蛍、だいじょうぶ!?」と心配して大声で言葉をかけた。「ゆ、由香ちゃん……」
 次の瞬間…悲劇はおこった。フィーロスの放った光剣が鋭く目の前に迫ってきて、蛍はよける間もなくなって恐怖で身を震わせた。ギュッ!と絶望で目を閉じた。絶対絶命!
「ーぐうっ!」しかし、光剣の直撃を受けて、激痛に顔をゆがめたのは蛍ではなかった。それは、由香だった。彼女が、自分の身をなげうって、蛍という「親友」を守ったのだ。「ーゆ、由香ちゃん!」
 蛍は思わず涙声で叫んだ。由香は、蛍の知っている「生意気」で「少し傲慢」な顔とは違っていた。激痛で表情はゆがんでいたけど、その美しく真っ白な肌も顔もセミ・ロングの髪の毛も、とてもきらきらと魅力的に輝いてみえた。まるで、マリア様のようだわ…。一瞬、蛍はそう思った。
「…ほ、蛍っ、怪我はない…?」
 由香は激痛をがまんして微笑した。
「…あ、うん。でも……由香ちゃん」
「…そう、よかった…わ」
 しかし、その微笑みも、次の瞬間、凍りついてしまった。
「由香ちゃん……私のために…こんな目に……」
「いいの…よ。私たち…親友…で……しょ?…」
 由香はもう一度だけ微笑してから、静かに床に倒れ込んだ。蛍は悲しみのあまり言葉を失った。そして、顔を凍りつかせた。ビュウウ…ッ、という音に気付いて振り向いたとたん光剣が迫ってくるのを知ったからだ。彼女はちいさな悲鳴をあげて飛びのいた。