ワイングラスを手にもち、健三郎は誰もいない書斎のチェアーに腰をおろしてニガ虫を噛んだような顔をした。
「まったく、あの娘は…」
と、自分のコントロールのきかない娘にイラだった。グラスに赤っぽいフランス・ワインの液体を流し込み、口をつけた。健三郎はひどい嫌悪感に襲われて、眉をツリあげていた。
オレンジ色の遠くの空に浮遊していたダビデはギッと窓からみえる健三郎の姿を睨んでいる。しかし、美里のおやじは魔物の存在には気付きもしなかった。
「あいつが次のターゲットか」
ダビデは口元に冷酷な笑みを浮かべた。
美里の豪邸から螢たちはトボトボと出てきた。玄関から歩いていった螢たちは溜め息を洩らした。それはひどいショック感があった。
「あ。あの……ごめんよ。螢ちゃん、由香ちゃん、有紀ちゃん」美里が申し訳なさそうにいった。「…あのオヤジがいったことは気にしないでよ。ーごめん!」
有紀はゆっくりと優しく微笑んで、
「いいのよ、美里ちゃん。気にしてないから」
螢たちも「そうそう、気にしてないってばっ」
と笑った。ーそして、
「私たちっ、親友っしょ?」
「親友でしょう?……じゃないの?あんた(螢)ぜったい北海道に移り住んだ方がいいわね。牧場で馬や羊の餌になる藁とか運んで、ボーイズ・ビー・アンビシャス!とか一人でさけんでりゃいいのよ」
フト、美里は三人の笑顔をジッと覗き込んだ。そして、魅力的な笑みを浮かべて、
「もちろん。私たちは親友だねっ」
といった。


