マジック・エンジェルほたる


 しばらくして、黄江健三郎がムッツリとした岩のような顔のまま歩いてきた。そして、「そのひとたちは?」
 と冷たい口調で尋ねた。美里は、自分の友達であること、食事でも御馳走したいと思っていること、などを告げた。
 しかし、螢たちの挨拶などを無視して、冷血漢の顔のまま「お前にしては、珍しく友達が出来たようだな。だが…みるからに出来の悪そうな娘たちじゃないか。こんな娘たちと付き合うのは止めるんだ!おまえにはこんな平民じゃなくて……もっと上流階級の人間こそふさわしい」
 と吐き捨てるように言った。
 螢と由香はムッとした。有紀はあまりの言葉に、驚愕して蒼ざめて黙りこんだ。
「ちょっと、おやじ!なんてこというんだ!!」
 美里は怒鳴った。
 健三郎は何も動じなかった。美里は父に近寄って、癇癪をすべて父に向けたが、健三郎の瞳は北極海より冷たかった。「うるさい、親に反論するなんて、十年はやいんだ」と怒鳴った。「わかったな?!その娘たちは追っ払え!」
 黄江健三郎はそのまま冷酷な表情のまま姿を消すように歩き去った。
「…このぉ。」美里は下唇を噛んだ。ああいう人間は美里にとって軽蔑こそすれ、尊敬できるものではない。もちろん同じ部屋て同じ空気をすっているのも嫌だ!

  ワイングラスを手にもち、健三郎は誰もいない書斎のチェアーに腰をおろしてニガ虫を噛んだような顔をした。
「まったく、あの娘は…」
 と、自分のコントロールのきかない娘にイラだった。グラスに赤っぽいフランス・ワインの液体を流し込み、口をつけた。健三郎はひどい嫌悪感に襲われて、眉をツリあげていた。
 オレンジ色の遠くの空に浮遊していたダビデはギッと窓からみえる健三郎の姿を睨んでいる。しかし、美里のおやじは魔物の存在には気付きもしなかった。
「あいつが次のターゲットか」
 ダビデは口元に冷酷な笑みを浮かべた。