マジック・エンジェルほたる

に更衣室を後にした。
 美里は校庭へ出て、青草の茂るような場所へと素足のままで踊るように駆けつけた。もう空手部員の男の子たちは練習をしていた。突き、の連発だ。押呼っ…という声が猛々しい。ちなみに女性部員は黄江美里ただひとりだ。ー最近では、女の子もよく空手を習ったりしているはずなのに、緑川高ではそうしたムーブメントは起きていない。
 汗くさい、疲れる、カッコ悪い、もてない、などというネガティブな印象や思考が働くからかもしれない。確かに、格闘技よりもテニスやバスケットなどの方がスマートだし魅力的にみえる。まぁ、スポーツをして「強靭な肉体と強い精神力」を身につければいいし、「終りよければすべてよし」な訳だから、別になんのスポーツでもいいだろう。
 ただ、Jリーグが流行っていたからサッカーをやる、伊達公子が活躍していたからテニスをする、野茂が活躍しているから野球をする…というのはひたすら流行りとルックスとスタイルだけを追う日本人らしい…とも言える。つまり、よりかかりだ。こうした人々は、キムタクだかが卓球を始めたら、同じように卓球を始めるに違いない……。
「押呼っ!先輩方、遅れてすいません」
 美里が頭をさげると空手部員の男の子たちは、いいんだよ美里ちゃん、と素直に少し恥ずかしそうにいった。ナーバスな人達だ。女の子の手を握ったこともないシャイな人達だ。「やあ。美里ちゃん、今日も気合いはいってるね」
 緑川高の空手部のキャプテン、三年生の宮木武蔵が笑顔で声をかけてきた。(たけぞう…じゃない。ムサシだ!)この男の子はけっこうハンサムで筋肉質なスポーツマン・タイプだ。ブルース・ウイルス風…とでもいえばいいのか。ただ、B・ウイルスみたいに禿げてはいない。