マジック・エンジェルほたる


「あ、由香ちゃん!おはよう」
「あら、珍しいわね螢。あんたが寝坊しないで登校するなんてさぁ」
「そういう由香ちゃんだってさぁ。こんなに早く。まだ八時二十分だよっ。まるで老人のように早起きじゃんよ」
「早起きは三文の得ってね」
「……なにそれっ?サイモンって中年のロック歌手の?」(サイモン&ガーファンクルのこと)
「三文!朝早く起きれば三文っていう昔のお金を拾っちゃう(違う!)っていうことわざよ!!」
「なんでさぁ?タイム・スリップでもするって訳?三文で缶ジュースとか買えんの?」
「知らないわよっ!」
 ふたりは通学路を悠然と歩いていた。もう八時二十分だというのにである。
 校門が強制的に閉められるのは八時三十分なのでもう間にあわない距離だ。
「それよりさぁ。TVアニメの”カード・キャプターざくろ”見た?最終回っ、よかったっしょ?」
「知らないわよ、アニメなんて!じゃあさぁ、東京美術館で今度、ルーブル美術館の絵の展覧会があんだけど、知ってる?」
「マーブルってチョコレートじゃんよ」
「ルーブルっ!!馬鹿じゃないの」
 ふたりは呑気に並んで歩いていた。そして、フト、立ち止まった。
「あら、あの子、ミサトちゃんじゃないのよっ。あのデカイのは間違いないわよ」
 と螢たちは思わず声を出した。遠くの交差点を横切っている制服姿の黄江美里を発見したからだ。彼女は孤独に、しかし堂々と歩いていた。狼のように気高く虚勢をはって…。「どこにいくんだろう?またケンカかなぁ?」
「かもね、殴り込みとかさぁ。……ところで、デカイって彼女のどこが?背丈?」由香は螢にきいた。
「そりゃあさぁ、胸じゃないの!ほらっ、ホルスタインみたいにさぁ…
「馬鹿じゃないのっ!そんなに大きくないじゃないの。それに乳牛とくらべてどうしようっていうのさ。まぁ、あんたみたいにペッちゃんこな胸してりゃあさぁ……どんな女の子〃を見たって、大きな胸ね、って思うんだろうけどさ」
「ひ、ひとのこといえる訳!このペチャパイっ!!」
 螢は思わず由香にエンズイギリをくらわした。