美里は部屋は螢のような乙女チックなものではない。由香のような何もない部屋でもない。有紀の部屋のような知的空間でもない。
何となくヨーロッパの金持ちの部屋みたいな雰囲気だ。ただ、異質なのは壁に張られた演歌歌手のポスターだ。香西かおるや美空ひばりなどだが、これは個人の趣味なのであまり関係ない。
美里は重い足取り出歩いてきて、ベットに倒れこんだ。彼女はちょっぴり悲しい気持ちになっていた。彼女の胸はひどい衝撃と苦い現実に押し潰されそうだった。
「あぁ…男に生まれりゃよかったよ」
フト、叶わぬ願いを呟き、美里は寂しい気持ちのまま瞳をそっと閉じた…。
「あ、由香ちゃん!おはよう」
「あら、珍しいわね螢。あんたが寝坊しないで登校するなんてさぁ」
「そういう由香ちゃんだってさぁ。こんなに早く。まだ八時二十分だよっ。まるで老人のように早起きじゃんよ」
「早起きは三文の得ってね」
「……なにそれっ?サイモンって中年のロック歌手の?」(サイモン&ガーファンクルのこと)
「三文!朝早く起きれば三文っていう昔のお金を拾っちゃう(違う!)っていうことわざよ!!」
「なんでさぁ?タイム・スリップでもするって訳?三文で缶ジュースとか買えんの?」
「知らないわよっ!」
ふたりは通学路を悠然と歩いていた。もう八時二十分だというのにである。
校門が強制的に閉められるのは八時三十分なのでもう間にあわない距離だ。
「それよりさぁ。TVアニメの”カード・キャプターざくろ”見た?最終回っ、よかったっしょ?」


