マジック・エンジェルほたる

「うるさいっ!とにかくゆうことをきけ!!」
 しばらくの沈黙の後、父はくどくど続けた。「…お前はもうすこし女らしくした方がいい。言葉づかいも、服装も!」
「どういうのが女らしいってなんのさ?どんな言葉づかいが女らしいってのさぁ?どういう服が女らしいってなんのさぁ?」
「欧米のエスタブリッシュメントのお嬢様のようにだ!」
「…あたしは外人じゃないんだけどさぁ」
「……じゃあ、ロイヤル・ファミリーの雅奈子さまのようにだ!しとやかな服、丁重な言葉づかい、マナー、社交ダンス、ピアノ…」
「なにそれ?」
「女は黙って男のいうことをきいてればいいんだ!」
 美里は父親の怒りにしばし言葉を失った。そして、冷静な顔で、
「…おやじは明治時代の男みたいだねぇ。女は黙っていうことをきけ!男の三歩ぐらい後ろを黙って歩けっ…てさぁ」
「おやじ…じゃなく「お父様」と呼べ!」
「…あのさぁ…おやじには悪いけど……あたしは見合いなんてしないよ。結婚はするかも知れないけど…それは恋愛結婚な訳さぁ。でも…それまでは自由でいたいね。こんなところに縛られてるのはゴメンだね。成金の一人娘としての存在で埋もれたくないよ。夢を、自分自身の夢を叶えたいんだよ。まだ、なにをしていいか見つかんないけどさぁ。…歳をとってから「あぁ、すればよかった」なんて後悔したくない。目標に向かって突っ走り成功をつかむ!そんなサバイバーになりたいね。そのためには努力しなくちゃならないし、自由がなくちゃね。今、家庭にしばられる訳にはいかないんだよ。…わが道を行く…まさ しげん    
に至言だね」
 美里は、その胸に秘めた思いを熱っぽく語った。健三郎は、しばらく自信に満ちあふれた娘の顔をジッとみた。そして、
「まぁ、夢を持つのは別にかまわん。いずれ挫折やもっと困難なことに直面して諦めるものだから。ただ、お前ぐらいの年になってまだ乙女チックな夢…シンデレラ・コンプレックス的な夢を語っているのは問題だ!」父親は怒りにまかせていった。
「とにかく、私のいう通りにしていればいいんだ!お前は女なのだから…」
「……女だから?」
 美里はショックめいた言葉を呟くしかなかった。女だから…女性だから…ダメ?