マジック・エンジェルほたる

 しばらくすると、キキキッと、黒色のロールスロイスがタイヤをうならせながらやって来て美里の行く手を遮るように停まった。車は、しんと光っていた。
 すぐにドアが開いて運転手の白髪の老人が「美里お嬢様、どこにいらっしゃったんですか?!お父上がお待ちですよ。はやくお乗りください」と丁重に言って美里の近くに歩き寄った。
「あ、英さん。ごくろう様」美里はとても魅力的な表情で高級車に乗り込んだ。バタン!と重い金属ドアがゆっくりと閉まった。
 例によって金に弱い螢は、
「うあっ、すごい高い車じゃんよっ」と興奮して頬を赤くして、瞳をきらきらさせて呟いた。
「そうねっ。高級な車ね。たしかメルセデス…じゃなくてリンカーン…?キャデラック?ランボルギニー・ポルシェ?」
 螢は笑って「違うってば由香ちゃん。ほらっ、よくバット・マンに登場するやつよ」
「…あぁ。またアニメーションの話?」
「違うよ、T・バートンの映画のやつだよ。主人公のバット・マンが乗ってさぁ…」
「”バット・マン・カー”とあの車のどこが似てるっていうのっ?!色が黒いだけじゃないのっ。馬鹿じゃないの!?」
 有紀はそんな二人に「あの車はロールス・ロイスっていう外国の高級車よ」と素直に教えた。そして三人は走り去るロールス・ロイスを茫然と見送ってから、
「…あの子、お金持ちだったのね」
 とポツリとつぶやいてしまっていた。