マジック・エンジェルほたる

「…そうそう。神保には私がよっくお説教しておくからさぁ。成績おっこちたんだってぇ…私がお勉強を教えちゃうっしょ…」
 由香は「なにを不可能なことばかりいってんの?!」といった。
「うるさいのよ!主人公のお決まりのセリフじゃんよぉ」
「ー誰がそんなん決めたの?!」
「あ、あの…おふたりとも……どうだったかしら?」有紀は魅力的な笑みを浮かべて尋ねた。「もう、前みたいに臆病な女の子じゃなかったでしょう?…私」
 螢と由香は鳩が豆鉄砲をくらったような顔で目を彼女に向けると、
「これもおふたりのおかげね。ありがとう。…それと神保先生のこととか成績のことはもう別に気にしてないわ。だから心配しなくてよろしくってよ」
 と黒野有紀はにこりと言った。
 二人は、あら。私たち心配なんてなかったわよ、と笑顔をみせて「冗談、冗談」とカラカラ腹をかかえて大笑いした。
「…さぁ、ワンちゃん。一緒にお家に帰りましょう」しばらくして有紀は子犬の元へ歩いていって優しく抱き抱えてそう告げた。そして頬づりをして、幸せそうに可憐に微笑んでいた。


   犬を抱いてとろけるような微笑みを浮かべながら有紀が自宅へ帰ってくると
「有紀。その犬は?」
 と、戻ってきた娘に、静が冷たい口調できいてきた。しかし、彼女には答えられるはずもなかった。お母さんには逆らえない…。でも、このまま黙って突っ立っているわけにもいかない。
「…あの…お母さん」苦しい声で彼女はいった。が、そのオドオド口調をさえぎるように、「有紀っ!何度、おなじことをいわせるの?!あなたいつからそんなに馬鹿になったの!?捨てきなさいっていったはずよ!」
 静の冷たい声が響いた。
 有紀はどう言葉を発しようか悩んだ。「お母さん…お願い。飼ってもいいよね?」