マジック・エンジェルほたる

「どうだい?お嬢ちゃん」美里は画面から目をはなしもしないで自慢した。「バーチャでさぁ、私に勝てるやつなんて…関東地区では誰もいないね。あ……ところでさぁ。おさげのお嬢ちゃん……名前は何?なんていうの?」
「あ…え…その…有紀、黒野有紀です」有紀はぼんやりと答えた。しかし、彼女の不安は幾分かやわらいだようだ。でも、人に名前をきくならまず自分から名乗るのが礼儀であるし『美里風』にいうなら「それがルールってもんさ」というものだ。
 美里はフト、有紀の方へ顔を向けて近寄った。「ふうん、有紀ちゃんか…。なんかいいね」とほめた。「おさげのお嬢ちゃんっぽい名前かもね。有紀ちゃん、有紀ちゃん、有紀ちゃん、有紀ちゃん……。そういえばアイドル歌手にもそんな名前がいたような。内…」「あの…なにを言いたいのでしょうか?」
 何を?なんだっけ?なにか言いかけたんだっけ?美里には少し思い出す時間が必要だった。別に美里は頭は悪くないけど、ゲームに熱中しながら質問しているのでこうなるのだ。有紀ならふたつのことを同時に出来る。が、普通のひとにはそれはできないのだ。
 黒野有紀は少し遠慮ぎみに尋ねた。「あの。…あなたのお名前を教えていただけませんでしょうか?」
「あ、名前?私のか。いいよっ、ではなんて名前にしようかな」美里が愛想よくいった。「美空ひばり……っていっても知らないか」
「……いえ、存じてますけど。……芸能人のしかも亡くなったひとのお名前をきいてもあまり意味がないんではないかしら」