マジック・エンジェルほたる

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  だれもいない午前中の街路地を失意の有紀は、まるで夢遊病者のようにトボトボとふらふらと孤独に歩いていた。胸元には可愛らしい子犬をそっと抱いている。くんくんと子犬は彼女の方をみて鳴いていたが、有紀は両手をきつく握りあわせ、絶望的な視線をあらぬところに泳がせ、苦悩にみちた表情で歩いているだけだった。
 河辺へ…公園へ…花屋の前へ…アーケードへ…橋の下へ…喫茶店の前を横切って…。
 彼女はあらゆる場所を失意のまま、うつ向いて孤独に徘徊した。が、たまに通り過ぎた主婦などがいぶかしげに有紀の姿を見るくらいで、ほとんど何の存在感もなかった。
 なんとなくだろうか?有紀は無意識のうちにゲーセン”ギルガメッシュ”の前まできていた。ここは螢たちと楽しく遊んだ思い出の場所だ。まだそんなに前のことじゃないのに…だいぶまえ…五年以上前のような気もする。古いセピア色の風景……のような。
 黒野有紀は空虚な足取りでセンター内へと入っていった。
 センター内には、あの頃のコンピュータ・ゲーム「バーチャル・バトル」がひっそりと存在していた。楽しい日々、あの瞬間のままだ。彼女は座席にゆっくりと座って、以前と同じような不安気な表情のままで黙り込んでオドオドと画面に目を向けていた。そして、ポケットから小さな小さなお財布を取り出して、震える指先で百円玉をつまみだして投入した。…ガチャン!