マジック・エンジェルほたる


「黙れ。このガキが…お前なんかに何がわかるっていうんだ?!ナマイキいってんじゃないっ!」
 彼女は頭から冷水を浴びせかけられた様に肩をすくめて立ち尽くし、黙り込んだ。そして、くやしくて情けなくって瞳から大粒の涙をぽろぽろ流して、
「先生はフィリステンね!」と断言した。
「どういう意味だ?」神保は息をのみ、目をまん丸にした。
「もぉ、いいです!」
 彼女は冷たくいうと、そのまま顔をそむけたまま、悲しい足取りでその場を駆け去った。「あ。待ってよ!有紀ちゃん」
 螢と由香は弾かれたように駆け出して、有紀の後ろ姿を追った。……

  有紀はフラフラと自宅の自分の部屋へと、青ざめた表情のまま涙もふかないで帰ってきた。こんな風にこんな時刻に家に戻ってきたことなど一度もなかった。
 ひどく疲れて悲しくて胸が張り裂けそうな気持ちだった。なんでもないことに嫌悪感を覚えそうな気分だった。
 ”可愛らしくっておとなしい文学美少女”黒野有紀は涙をポロポロと流しながら、震える指先でベットの下に置いてあったミカン箱を引き出した。ミカン箱には柔らかい毛布がしいてあり、そこにちょこんと「捨てたはずの子犬」が存在していた。
 彼女は可愛らしい子犬をじれったく思えるほどにゆっくりゆっくりと胸元まで抱き上げて、堪えきれなくなってギュッと抱き締めて号泣した。