マジック・エンジェルほたる

 由香は真顔でいった。
「(無視して)…あのさぁ、有紀ちゃん。お願いがあるんだけどさぁ…」
「『お金貸してちょうだい』とかいうお願いかしら?」蛍は由香の皮肉を無視して、「あ…あのねぇ。お勉強を教えてもらいたいのよ」
「え?!何っ?お弁当を…ちょっと苦しい……お勉強って誰に?あんたんとこのセーラに?」「(無視して)…ダメかなぁ?少しは20点とか30点とかさぁ、テストで取ってみたいのよぉ」
 蛍は有紀にそういって、元気いっぱいに笑った。そして、「もち(ろん)、由香ちゃんも一緒に!」
 とお願いをした。ので、由香は、「え?え?えっ?!ちょっと、私も?!」と驚いた声をあげてしまった。
「…くすっ」有紀はそんな五流コメディアンのような二人組をジッと眺めて、魅力的な笑顔ですぐにいった。「えぇ、もちろんいいわよ。お勉強をお教えいたしますわ」
  しばらくして、例のふたり組は「……あぁ。全然わからないわっ!」と弱音を吐くことになる。当然、有紀という頭の良い女の子に優しく教えてもらっても、この二人には理解できるわけないからだ。
「……あの。二人とも…あきらめないで頑張りましょう。千里の道も一歩から、よ」
 有紀ちゃんは優しい優しいお母さんのように笑顔を見せた。横に座っていた二人は、
「え?山咲千里(日本の女優)?!」と尋ねた。
「…………ローマは一日にして成らず……よ」
 有紀は少し言葉をつまらせてから、言い直して教えた。そして、はぁ、っと思わずタメ息を洩らした。……