親父の説得に手を焼くかと思った

強面の親父の顔を目の前して、俺は声を震わせながら自分の想いをぶちまけた

ただ親父に言われたとおりの人生を歩んで、組を継ぐのではなく…『自分』を持って生きていきたい、と

組は継ぐ、必ず

この決められた将来に不満はない

だけど、『自分』が無いの嫌だ、と俺は親父に伝えた

親父は静かに頷き、俺の一人暮らしを了承してくれた

俺が自分の想いを告げた後に、親父がポツリを呟いていた

『香が、景に旅をさせて欲しいって言ってたんだ、と』

俺が親父に話す前に、兄貴が事前に親父にそれとなく伝えていたのだと、俺は知った

俺がいきなり言って、許す親父じゃねえ

ワンクッション置いて、親父に考える時間を与えておいてくれたんだ

兄貴はいつも俺より先をいっている

人生も、性格も……俺より勝っている

組を継ぐ以上、俺はいつかは兄貴より人として上にならないといけないのだろうけど…俺は兄貴を越えられるのだろうか?

俺は、親父の部屋から自分の部屋へ向かう廊下を黙々と歩いた