Call My Name

俺は家に帰ると、家お抱えの外科の医師に来てもらった

腕と頭の治療を終えると、俺は自分の部屋でゆっくりと過ごした

いや…、本当は瑞那とナデシコを助けに行くつもりだった

すぐに家を出て、青族の奴らをぶっ潰してやるって思ってたけど、家に閉じ込められた

親父によって、部屋に閉じ込められたんだ

親父は喧嘩をするように言っている割には、俺が大怪我をしたと知ると、おろおろして外に出るなと怒鳴っていた

跡継ぎがいなくなるのを恐れているのか

それとも俺の怪我に、驚いてしまったのか

「ふん」と俺は笑うと、部屋の障子を開けて中庭を眺めた

縁側には、黒いスーツを着ている親父の部下が2人ほど立っていた

俺が部屋から飛び出さないための見張り役だ

廊下側の障子にも、きっと部下がいるはずだ

俺は足を肩幅に開くと、ぽけーっと外を眺めた

外は良い天気だ

白い雲がまるで綿あめのように見えてくるのは、俺が糖分を欲しがっているせいなのか?

俺が明るい外に、癒されていると部屋の奥に置いてある携帯が鳴った

滅多になることのない携帯

俺は、あまり携帯のアドレスを交換しない

たいした用事でもないのに、メールや電話が鳴るのが好きじゃないからだ

兄貴と、親父と…ナデシコくらいか

あとは持ってないと、俺はアドレス交換を断る

ついこないだまで、ナデシコとも交換してなかったくらいだ

ナデシコだって、店にちんぴらが来たときに連絡してという理由で交換しただけで、一度だって送り合ったことなどない

きっと携帯の相手は、兄貴だろう

俺は畳の上を素足で歩くと、携帯を手に取った