俺らはそれから、無言で座り続けた

会話が続かないっつうか…何を話したらいいのか

…ていうか、話自体していいものか

俺にはわからなかった

終業のベルが鳴ると、俺は立ち上がって本棚に本を戻した

「サンキューな」

俺はスイレンに振り返ると、微笑んだ

「え?」

スイレンが不思議そうな顔をして、首を傾げた

「俺、クラスの奴らに名前呼ばれたの…初めてだと思う。嬉しかった。じゃあっ」

俺は軽く手をあげると、図書室を後にした

「あ、やべっ」

俺は上着を受け取るのを忘れて、図書室を出てきたのを思い出す

振り返って戻ろうかと思ったが…、「面倒くせえや」と呟くと、廊下を歩きだした

授業を終えて戻ってきた兄貴とすれ違う

兄貴はにこっと微笑むと、何も言わずに準備室に入って行った

俺とスイレンが会ってたとはバレてねえな

ちらっと兄貴の後ろ姿を確認してから、俺は教室に戻った