Call My Name

「ちょっと…」

サキが不満そうな声をあげる

俺は振り返らずに、スタスタとまっすぐに歩いた

「私たち、相性良かったじゃん。私と立宮弟は、絶対良いカップルになるって……」

サキの手が俺に触れるなり、俺は腕を振り上げた

「…お前じゃないっ! 俺が欲しいのは、お前じゃねえよ」

俺は足を止めると、サキに振り返って声を荒げた

俺は自分の言い放った言葉に、驚いた

じゃあ…誰だよ

俺が欲しいのは……って、自分で己の心に突っ込んでいた

俺の脳裏に浮かぶのはたったひとりの女だ

俺の吐き気を一瞬で癒してくれる女

俺は欲しいのはスイレンだけだ

「立宮弟? どうしたの?」

サキが俺の頬に触れようとして伸ばしてきた手を、俺は一歩後ろに下がると避けた

「触るな」

「なんか変だよ?」

「変だったのは今までの俺だ」

「は?」

「もう俺に関わるな。俺は、もう…誰も抱かねえよ。誰も、な」

俺はサキに背を向けると、大股で歩き出した

もう…俺は、誰も抱かない

好きになった女以外は抱かない

スイレン、無性にスイレンに会いたいよ

スイレンが、好きだ

俺は、スイレンがいい

たとえ、叶わない恋だったとしても、俺はスイレンが好きだ