Call My Name

一年の足音が小さくなると、俺はその場に蹲った

吐きて…マジ、ヤバいかも

こんな廊下で、胃の内容ブツをぶちまけるわけにはいかねえけど…気持ち悪くて、動けねえ

こみ上げてくる異物を、俺は胸を押さえて必死に堪えた

どっかいけ

俺の吐き気…消えちまえ

床に両膝をつく

右手で身体を支えながら、左手で吐き気の根源をぐっと制服の上から押さえつけた

脂汗が額に浮き上がる

異常に身体が寒い

マジ、これはやばい

近くにトイレはねえのかよ

あってもそこまで辿りつけるか…わかんねえけど

くそっ…堪えろ、俺

マジで、我慢しろ

吐くな

出すな

出るな

俺は瞼を閉じると、ぐっと息を止めた

もう駄目だ…と思った瞬間、温かいモノが俺の身体を包み込んだ

「立宮君……苦しいの?」

スイレンの優しい声がした

スイレンが俺を抱きしめてくれている

驚いた

スイレンの匂い、スイレンの温もり…スイレンの声

たったそれだけのことなのに、一気に俺の吐き気がおさまった