Call My Name

2年の教室の前で、俺は我慢できずに口元を押さえて、立ち止まった

気持ち…悪りぃ

吐きてぇ

胃の中がひっくり返りそうだ

「あ、いたいた! 立宮せんぱーい」

一年の陽気な声が俺の背後から聞こえてくる

…だよっ、一人にしてくれよ

俺は吐き気を堪えると、追いかけてきた一年に振り返った

「菅原たち、図書室に行ったっすよ。他の奴らが、見張ってるんで…隙があれば、菅原から妃木を奪ってくるんで!」

『っす』と一年の男子が、頭を振りながら俺に報告してくる

はあ?

いつ俺が、瑞那を菅原から奪えっつったよ

あの二人はもう放っておいていいだろ

瑞那が菅原を選んだ時点で、俺はもう……瑞那にとって用なしの人間なんだよ

なんで…放っておかえねえんだよ

どうして、俺の気持ちがわからねえんだよ

俺は怒ったかよ

菅原に、瑞那を奪われて俺が…荒れたかよ

…んだよ、どいつもこいつも、好き勝手にやってんじゃねえよ

どうせ…俺のせいにするんだろ

俺に言われたからって…言い訳をするんだよ

俺は一言も言ってねえのに、俺の指示に従っただけって説明するんだろ

いつでも俺が悪者なんだ

俺はこみ上げてくる吐き気を必死に食いとめながら、後を追いかけてきた一年の男にさっさと立ち去れと言わんばかりに手を振った

もう、好きにしろ

俺が悪者でいいから…

なってやるよ

いくらでも俺が悪者になってやる