Call My Name

目的地に到着する前に、始業ベルが鳴った

かったるい音だ

あのベルを聞くたびに、テンションが下がっていく

時間できっちりと区切られた生活にうんざりする

英語の準備室の扉が開くと、兄貴が教科書を小脇に抱えて出てくるのが見えた

すらっと長い手足を優雅に動かしながら、俺のほうへと歩き始める

爽やかすぎるだろってくらいの笑みで、俺に笑いかけてくる兄貴が、憎たらしく見えた

「もしかして僕の授業…サボり?」

「まあ…サボるっていうか、フケるっつうか」

俺はポケットに手を突っ込むと、唇を尖らせた

「放課後、きちんと補習授業受けるように!」

兄貴は俺の金髪の髪をぐしゃぐしゃに乱した

やめろよ…いつもガキ扱いしやがって…俺のセットした髪がくずれるだろ

誰にも褒められたことのない髪だけどな

高校生で、金髪なんて…目立つし、嫌煙される

別にいいんだ

普通にしてたって、目立ってるんだから、今更どんな格好をしようが……

むしろ俺は真面目な格好より、崩れた格好のようが…それらしくなるだろ

ヤクザの息子って感じだろ

金髪はイメージ通りで、俺にぴったりだ

「景、僕の授業はサボってもいいけど…」

「…わかってるよ。他のはちゃんと出てるだろ」

俺は兄貴に片手を振ると、廊下を歩き始めた

俺の目的地…そこは、図書室だ

俺の楽園

唯一、心は安らぐ場所だ