Call My Name

呆れたのか…それとも怒鳴るのに疲労を感じたのか

ツバキの口が静かになった

車中には、小声で誰かがしゃっべっている

兄貴が好んで聞くラジオ番組だ

そっか…兄貴の好きな番組が始まったから、ツバキが大人しくなったんだな

俺は窓に向かってふっと口を緩めて微笑むと、左手に温もりを感じた

え?

俺は窓に顔を向けたまま、ごくっと生唾を飲み込んだ

スイレン?

俺はスイレンに手を握られているのか?

なんで、スイレンは俺の手を握ってるんだ?

意味もなく男たちに喧嘩を売るような男なんだぞ?

見てただろ?

俺が、俺の歩く場所を邪魔したからって階段から突き落とすところを、スイレンはちゃんと見てただろ?

怖くないのかよ

なんで手を握ってくるんだよ

スイレンの指が微かに震えているのが、俺の手の中でわかった

緊張してんのか?

もしかして…俺がやった行為について、スイレンにはもう見抜かれているのだろうか?

男たちを階段から突き落とした理由を、スイレンにはバレているのだろうか?

でも…あの状況なら、理由はわからないはずだ

それにナデシコが、きっと「肩がぶつかってキレただけ」と説明しているだろうし

じゃあ、なんで?

俺がどんなにここで考えても、スイレンの本心なんてわからねえな

だけど…この手の温もりはスイレンの温かさだ

俺は窓を見つめたまま、スイレンの手を握り返した

俺たちに会話はない

ただ手を握り合ってるだけ

それでも凄く心が落ち着いてくのは、きっとスイレンの優しい感情が手から伝わってくるからだろう