「スイレンが、最近…お前の質問ばかりしてくる。弟、何かしたんだろ?」

「はああ?」

俺は眉に力を入れると、肩を持ち上がる

何もしてねえっつうの

…てか、何もできねえだろ

あんな素直で、良い子の鏡みたいな奴に、俺が…汚せるわけねえだろ

色でたとえるなら、スイレンが白…俺が真っ黒だろ

スイレンを俺の闇で、影を差したくねえよ

スイレンは白のままがいいんだ

汚したら…いけないんだよ

遠くで見てるのが、いい

白いあいつを、遠くで見て癒されるのがいいんだ

触れたらいけない

「何かしたんだろっ」

ツバキの蹴りが俺の脛に入った

「いって…。何もしてねえよ。なんでいつも、俺のせいなんだよ」

「弟のせいじゃなくて、誰のせいだっつうのだよ?」

「ああ? 知らねえよ」

ツバキにぎろりと睨まれた

「…たく。はいはい、俺のせいですよ」

俺は後頭部をガシガシと掻くと、はあっとため息をついた

「スイレンには手を出すなよ」

「わかってるよ」

「大事な友達なんだ。弟に汚されたくない」

「はいはい」

「わかってんのかよ!」

ツバキの平手が俺の頭に直撃する

「…かってるよ」

だから、何もしてねえっつってんだろうがっ

わかんねえ奴だな

…てか、そんなに俺は信用のねえ男なのか?